「ノウイング」 現代版・最後の審判 ~決してやってはいけない例のアレ~

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評価 ★☆☆☆☆

 一言で喩えると『現代版・最後の審判 ~決してやってはいけない例のアレ~』

2009 アメリカ "Knowing"



 あらすじ。

 宇宙物理学教授のジョン・ケストラー(ニコラス・ケイジ)は、息子が小学校でタイムカプセルから手に入れた50年前の少女が書いた謎の数字の羅列が、これまでに起こった大災害を正確に予言していることに気づく。そこにはこれから起こるさらなる大災害についても記されており。。

 まず、ぜったいに勘違いしていけないのは、この映画はSFでもサスペンスでもない、ということ。これを知らずに観てしまうと私のように物凄いショックを受けてがっかりを超えて呆然としてしまうことになる。この映画はB級ホラーパニックものである。

 前半の数字の羅列を検証する流れはすごく面白く、質の良い謎解きSFっぽい雰囲気でツカミはOK! なのだが、途中から雲行きが怪しくなり、「これはもしや… 謎解き映画のオチの中でも、決してやってはいけないと言われている例のアレでは。。。」と薄々感じながらも見続けたのだが、最終的に伏線も謎も全てぶん投げられ、ラストでやっぱり『例のアレ』が出てきた瞬間、愕然としてしまった。

 はじめからB級映画だとわかっていて、余裕を持って『例のアレ』が出てくるならいいんだけど。爆笑できるんだけど。今回は役者もニコラス・ケイジだし、シナリオも途中まで良質なSFサスペンスかと思って真面目に見ていたのに。。 

 タイトルは「KNOWING」。つまり、未来の結末をあらかじめ知ってしまう恐怖。ただ、この映画の結末はあらかじめ知っておくべきだった。(そしたら観なかったと思うけど)


 以下ネタバレ。





























 ラストでは、雲が割れて空から『例のアレ』、そう、『宇宙船』が降りてくる。そして宇宙人の登場。口を開けて呆然とするニコラス・ケイジ。。(観客もみんな同じ気持ち) そう。この映画は典型的な宇宙人オチ映画だったのだ。

 映画の2大「決してやってはいけない終わり方」は「夢オチ」と「宇宙人オチ」だと言われている。その理由は、夢と宇宙人が出てくると、急に『なんでもアリ』になって薄っぺらい映画になってしまうからだ。はじめから宇宙人モノだったりとかして、「これはこういうファンタジーなお話なんですよ!」となっているなら全く問題ないのだが、現実の世界の中で、現実の「常識の範囲」で謎解きをしていたのに、最後の最後で

  •  謎を追う! → でも実は全て夢でした!(夢オチ)
  •  謎を追う! → でも実は宇宙人の仕業でした!(宇宙人オチ)

 となって急にファンタジーにされてしまうと、「え。。。? じゃあこれまでのことはいったい何だったんやねん!」となってしまうからだ。

 この『ノウイング』も、キリスト教の「世界の終末」を模した感じのラストで、なんとなく宇宙人オチながらも」意味がありそう」な深い雰囲気を醸し出そうとしてはいるのだが、宇宙人とか出してしまうと、「え。。。? じゃあ前半の数字の謎解きとかは一体何だったんやねん!」となってしまう。キリスト教の世界の終末を描きたかったなら初めからそういうテーマの映画を作るべきなのだ。

 「夢オチ」と「宇宙人オチ」は、広げすぎたストーリーを無理やり畳む最後の手段だが、同時にまじめな観客を全力で白けさせてしまう禁断の果実なのだ。

 B級映画などだと、よく話を広げすぎて収集がつかなくなった場合に、「夢オチ」と「宇宙人オチ」が使われる。あれはあれで一種の様式美というか、撮影現場の混乱なども想像しつつ楽しく笑いながらみれるのだが、「ノウイング」は有名俳優も使った大作なのに、なぜやらかしてしまったのだろう?

 しかも世界の終末とかまで無理に話を広げる必要は全くなく、途中までの展開のまま、『ニコラス・ケイジが未来の事件を食い止めようと、暗号を解読したり走り回って四苦八苦するサスペンス風パニック映画』で続けても十分面白そうだったのに。。
 
 




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metaphorizer

 いい映画は観るたびに発見があるので、何度観ても楽しめる。 つまらない映画は観たあとにあーでもない、こーでもないと言い合って楽しむ。 映画館に行くよりも、引きこもって家でだらだらDVD観るのが好き。 特にSF、サスペンス、アニメーション。


なんとなく評価基準


★★★★★ 超スゴイ!! 殿堂入り。
★★★★☆ スゴイ! 人に薦めたい作品。
★★★☆☆ まあまあ面白い。また観てもいいかも。
★★☆☆☆ ちょっと残念。もう一度観ることはないかな。
★☆☆☆☆ かなり残念。観なきゃよかった。。